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和歌山地方裁判所新宮支部 昭和45年(ワ)54号 判決 1972年11月13日

原告

北才太郎

ほか一名

被告

笠谷康

ほか三名

主文

一(一)  被告笠谷康、同宮原ミキエ、同岩本日出幸は原告北才太郎に対し各自金三五七万一、二七七円およびこれに対する昭和四五年一月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  同原告の同被告らに対するその余の請求ならびに被告岩本秀太郎に対する請求はいずれもこれを棄却する。

(三)  訴訟費用中、同原告と被告笠谷康、同宮原ミキエ、同岩本日出幸との間に生じた分はこれを二分してその一は同被告らの連帯負担、その余は同原告の負担とし、同原告と被告岩本秀太郎との間に生じた分は全部同原告の負担とする。

二(一)  被告笠谷康、同宮原ミキエは原告北操に対し各自金六万〇、七三六円およびこれに対する昭和四五年一月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  同原告の同被告らに対するその余の請求はこれを棄却する。

(三)  訴訟費用中、同原告と同被告らとの間に生じた分はこれを五分し、その二は同被告らの連帯負担、その余は同原告の負担とする。

三  この判決の主文第一項の(一)は被告笠谷康、同岩本日出幸に対し、同第二項の(一)は被告笠谷康に対し、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告才太郎

1  被告らは原告才太郎に対し連帯して金八〇七万二、三八九円およびこれに対する昭和四五年一月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用中、同原告と被告らとの間に生じた分は被告らの負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言。

二  原告操

1  被告笠谷、同宮原は原告操に対し連帯して金一五万八、〇〇〇円およびこれに対する昭和四五年一月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用中、同原告と同被告らとの間に生じた分は同被告らの負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言。

三  被告ら(全員)

1  原告才太郎の請求を棄却する。

2  訴訟費用中、同原告と被告らとの間に生じた分は同原告の負担とする。

との判決。

四  被告笠谷、同宮原

1  原告操の請求を棄却する。

2  訴訟費用中、同原告と被告笠谷、同宮原との間に生じた分は同原告の負担とする。

との判決。

第二原告らの請求原因

一  (事故の発生)

左記交通事故により、原告才太郎は受傷し、原告操所有の被害車が破損した。

(1)  発生日時 昭和四五年一月二〇日午後五時一〇分ころ

(2)  発生場所 新宮市元鍛治町一丁目五番地四先交差点

(3)  加害車 普通乗用車(和五ね九四〇五号)

右運転者 被告笠谷

(4)  被害車 軽四輪貨物自動車(六和な二三二〇号)

右運転者 原告才太郎

(5)  事故態様 交差点を直進中の被害車左横後部に交差道路を直進してきた加害車が衝突

(6)  原告才太郎の傷害の部位、程

頭蓋内出血兼脳震盪症、左大腿、腰部打撲傷、鞭打ち症の傷害を受け、事故当日から昭和四五年五月三日まで新宮市内森岡医院に入院し、その後も通院加療中であるが、頭痛、耳鳴、めまい、頸部、項部、両側肩部の圧痛、索引痛、腰部、臀部の疼痛、圧痛による身体障害等級八級三号相当の後遺症がある。

二  (責任原因)

(一)  被告笠谷

被告笠谷は無免許で右加害車を運転し、見とおしの悪い本件事故現場交差点にさしかかつた際、一時停止または徐行をすることもなく、高速度で右交差点に侵入したため、本件事故が惹起されるに至つたものであり、右は同被告の過失によることが明らかであるから、同被告は民法七〇九条により原告らの蒙つた損害を賠償する義務がある。

(二)  被告宮原

被告宮原は、被告笠谷の実母であつて、当時未成年者であつた同被告の親権者であつたものであり、同被告を監護、教育し、監督する義務があつたにもかかわらず、その義務を尽さず、同被告をして、無免許で自動車を運転せしめるような状態に放置していた結果、同被告が右(一)記載のとおり、その過失により本件事故を起したものであるから、民法七〇九条に基づき、右事故により原告らの蒙つた損害を賠償すべき義務がある。

(三)  被告日出幸、同秀太郎

被告秀太郎は被告日出幸の実父であるところ、本件加害車の登録所有名義人は右日出幸となつていたが、その買受代金は右秀太郎においてこれを支出したものであり、右実質関係からみて、

イ 右加害車は被告日出幸、同秀太郎の共有に属するものと解すべきである。

ロ 仮にそうでないとすれば、それは右秀太郎の所有にかかるものである。

ハ 右いずれでもないとすれば、それは右日出幸の所有に属するものである。

以上の理由により、一次的には被告日出幸、同秀太郎が、二次的には右秀太郎が、三次的には右日出幸が、本件加害車の運行供用者にあたるから、それぞれ自賠法三条に基づき、本件事故により原告才太郎の蒙つた損害を賠償すべき義務を有する。

三  (損害)

(一)  原告才太郎の損害 合計金八三四万〇、三八三円

1 治療関係費 金四一万六、〇一一円

(1) 入院ならびに通院治療費 金三八万五、一一一円

(2) 入院雑費 金三万〇、九〇〇円

(入院一日につき金三〇〇円とし、一〇三日間分)

2 休業損害 金九九万円

本件事故当時大工として土木建築請負業田畑建設に勤務し、一カ月金九万円の賃金を得ていたところ、一一カ月間休業した。

3 逸失利益 金三九三万四、三七二円

(イ) 月収 金九万円

(ロ) 稼働可能日数 昭和四五年一二月二一日から一二〇カ月間(一〇年間)

(ハ) 労働能力喪失率 四五パーセント

以上により逸失利益の現価額を算出すると、九万円×〇・四五×九七・一四五=三九三万四、三七二円となる。

(ただし、九七・一四五は月数一二〇、ホフマン式月別法定利率による単利年金現価係数)

4 慰謝料 金三〇〇万円

本件事故の態様、受傷の部位程度等諸般の事情に照し、原告才太郎の精神的、肉体的苦痛を慰謝すべき額としては金三〇〇万円が相当である。

(二)  原告操の損害 金一五万八、〇〇〇円

ただし、右は原告操所有の本件被害車の修理に要する費用である。

四  (損害の填補)

原告才太郎は、本件事故により蒙つた傷害の治療費として、被告らから金二六万七、九九四円の支払を受けたほか、自賠責保険金七五万円を受領した。

五  (結論)

よつて、

(一)  原告才太郎は被告らに対し、金八〇七万二、三八九円およびこれに対する本件事故発生の翌日である昭和四五年一月二一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を、

(二)  原告操は被告笠谷、同宮原に対し、金一五万八、〇〇〇円およびこれに対する右同日から同一の割合による遅延損害金の連帯支払を、

それぞれ求める。

第三請求原因に対する被告らの答弁

一  被告笠谷

請求原因事実第一項中、原告才太郎の傷害の部位、程度は知らないが、その余は認める。同第二項(一)および第三項はいずれも争う。

二  被告宮原

請求原因事実第一項中、原告才太郎の傷害の部位、程度は知らないが、その余は認める。同第二項中、被告宮原と同笠谷との身分関係は認めるが、その余の点ならびに同第三項は争う。

三  被告日出幸

請求原因事実第一、第三項はいずれも不知。同第二項(三)の事実のうち、被告日出幸が本件加害車の所有者であり、かつ、登録名義人であることは認める。

四  被告秀太郎

請求原因事実第一、第三項はいずれも不知。同第二項中、被告秀太郎が本件加害車の所有者ないしは共有者であるとの点は否認する。

第四被告日出幸の抗弁

被告笠谷は、被告日出幸の知らぬ間に、無断で本件加害車を持ち出して本件事故を起したものである。したがつて、被告日出幸には右加害車の運行供用者としての責任はない。

第五抗弁に対する原告才太郎の認否

否認する。

第六証拠関係〔略〕

理由

一  (本件事故の発生)

(一)  原告才太郎の傷害の部位、程度の点を除く請求原因事実第一項は原告らと被告笠谷、同宮原との間に争いない。

(二)  〔証拠略〕を綜合すると、被告日出幸、同秀太郎に対する関係においても右(一)の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

(三)  原告才太郎と被告笠谷、同宮原との間においては成立に争いがなく、被告日出幸、同秀太郎に対する関係においては〔証拠略〕を綜合すると、原告才太郎は本件事故によりその主張のとおりの傷害を蒙り、その主張の期間新宮市内森岡医院に入院したこと、その後遺症として、耳鳴、左五〇デシベル、右六〇デシベル程度の聴力損失が存するほか、時折り同原告主張のとおりの症状を呈することがあり、右耳鳴、聴力損失はほぼ症状が固定化していることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

二  (責任原因)

(一)  被告笠谷

〔証拠略〕によると、被告笠谷は無免許で本件加害車を運転し、時速約四〇キロメートルで南方から本件事故現場である左右の見とおしの悪い交差点にさしかかり、同所を直進(北進)通過するにあたり、同交差点の直前で一時停止すべく制動措置をとつたが、その操作が遅れてそのまま同交差点内に進入し、折柄、同交差点を西進通過すべく右加害車よりさきにすでに同交差点内に進入していた本件被害車左後部に加害車右前部を衝突させて本件事故を惹起させたものであることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。

右事実によると、本件事故は被告笠谷の一方的過失に基づくことが明らかであるから、同被告は右事故により生じた損害を賠償する責任がある。

(二)  被告宮原

被告宮原が被告笠谷の実母であり、本件事故当時未成年者であつた同被告の親権者であつたことは原告らと被告宮原との間に争いない。

〔証拠略〕を綜合すると、被告笠谷は本件事故当時満一八才であつて、母である被告宮原と同居し(〔証拠略〕に被告笠谷の住居として記載されている「新宮市浮島スタンド王将」が被告宮原の経営していた飲食店であることは当裁判所に顕著な事実である。)、新宮市内のバーでバーテンとして稼働していたこと、被告笠谷は昭和四四年四月ころにも無免許運転で検挙され、罰金に処せられたことがありながら、その後も度々無免許運転を繰返していたことが認められ、〔証拠略〕中右認定に反する部分は措信しがたく、他に右認定に反する証拠はない。

右事実に照し、被告宮原は、被告笠谷が無免許運転を繰返していることを知りながらこれを黙認し、或いは、これに対する適切な措置をとらなかつたものと推認するのが相当であり、このことをもつて、被告宮原には被告笠谷の親権者としての監督義務に懈怠があつたものと解することができる。

ところで、自動車の無免許運転は、運転者の運転技量が未熟であり、かつ、交通法規にも明るくないのが通常であるから、それは交通事故発生に結びつく危険性が大であり、また、右事故発生の可能性を予見することもできる行為であるというべきところ、本件事故も前記認定の事実から明らかなとおり、結局のところ、被告笠谷の運転の稚拙さ等にその原因が求められるものである。

そうとすると、被告宮原の前記監督義務の懈怠と本件事故との間には、相当因果関係が存するものというべきであるから、同被告は民法七〇九条に基づき、本件事故による損害を賠償すべき責任があるものといわざるを得ない。

(三)  被告秀太郎

〔証拠略〕によると、被告秀太郎は同日出幸の実父であること、被告日出幸は本件事故当時満一九才の未成年者であり、被告秀太郎と同居していたことは明らかであるが、同被告が本件加害車の実質上の所有者ないしは共有者であるとの原告才太郎の主張事実を認むべき的確な証拠はない(〔証拠略〕中には、一見、同原告の右主張に沿うが如き趣旨の部分も存するが、それらはいずれも単なる推測ないしは推測の伝聞であつて、これをもつて、右主張事実を認定することはできない。)。

〔証拠略〕を綜合すると、被告日出幸は中学校卒業後直ちに就職し、京都、大阪方面を転々とした後新宮に戻り、同市内で稼働していたこと、本件加害車は、同被告が伯父を保証人として月賦購入し、同被告所有名義で登録してあつたもので、本件事故当時は未だ右割賦金の支払中であつたこと、被告秀太郎はかねてから病弱で生活保護を受けて暮していたものであつて、右買受代金支払の資力はなかつたこと、右加害車は、被告日出幸が専らこれを使用していたもので、被告秀太郎は普通自動車の運転免許をもたず、右加害車を使用することはなかつたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はなく、そうすると、被告秀太郎を本件加害車の所有者ないしは共有者と認め得ないことは明らかであるところ、他に同被告が右加害車についての運行支配、運行利益を有していたことの主張立証はないから、原告才太郎の本訴請求中、同被告に対する部分はこの点においてすでに失当といわざるを得ない。

(四)  被告日出幸

被告日出幸が本件加害車の所有者であることは、原告才太郎と同被告との間に争いなく、そうすると、特段の事情の主張立証のないかぎり、同被告は自賠法三条による運行供用者としての責に任ずべきものと解されるところ、同被告は、本件事故は被告笠谷が本件加害車を無断運転中惹起したものと主張するが、右主張に沿う証拠はなく、かえつて、〔証拠略〕によると、被告笠谷は被告日出幸の了承を得て本件加害車を借り受け運転中本件事故を起したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

したがつて、被告日出幸は、本件事件について、自賠法三条による賠償責任を負うべきこととなる。

三  (損害)

(一)  原告才太郎の損害 合計金四五八万九、二七一円

1  治療関係費 計金四〇万五、九一一円

(1) 入院ならびに通院治療費 金三八万五、一一一円

原告才太郎と被告笠谷、同宮原との間で成立に争いがなく、同日出幸に対する関係では〔証拠略〕によると、本件事故による同原告負傷の治療費として、事故当日から昭和四五年八月末日までに金三八万五、一一一円を要したことが認められる。

(2) 入院雑費 金二万〇、八〇〇円

前認定の原告才太郎の一〇四日間の入院期間中、一日につき少くとも金二〇〇円の雑費を要することは公知の事実というべきであり、その合計は金二万〇、八〇〇円となる。

2  逸失利益 計金二三八万三、三六〇円

(1) 休業損害 金六七万〇、八三七円

〔証拠略〕によると、本件事故前同原告は大工職として稼働し、一日につき少くとも金二、五〇〇〇円の日当を得ていたこと、同原告は本件事故による負傷の結果、その後少くとも一一カ月間は稼働不能であつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

そこで、一カ月につき二五日間は稼働し得るものと推認されるから、同原告の月収は金六万二、五〇〇円となるところ、(同原告は事故の翌日からの遅延損害金の支払を求めているので)、右一一カ月間の休業損害の本件事故発生時における現価をホフマン式計算法により算出すると、次のとおり、金六七万〇、八三七円となる。

62,500円×10.7334=670,837円

(右一〇・七三三四は月数一一、法定利率による単利年金現価係数)

(2) 稼働能力低下による逸失利益 金一七一万二、五二三円

〔証拠略〕を綜合すると、同原告は大正三年生れで、本件事故当時満五五才であつたことが認められるところ、厚生省第一二回生命表によれば、その平均余命は一八・九四年であることが明らかであり、その仕事の性質上、また〔証拠略〕により認められる同原告には疾病、身体上の欠陥がなく、極めて壮健であつた事実に照し、右余命期間内において、右事故時から少くとも満九年間は就労し、前記同額の収入を挙げ得たであろうことが推認される。

ところで、〔証拠略〕を綜合すると、同原告は本件事故後昭和四六年四月ころから稼働しはじめたが、前認定の後遺症状のため、就労不能の日が多く、また、従前に比し軽い作業にしか従事できず、日当の額も減少していること、ほぼ固定化した耳鳴、難聴を除くその余の症状も多かれ少かれ、右就労可能期間中は残存するであろうことが認められ、これら諸般の事情を考慮すると、同原告の稼働能力は、本件事故のため、前記休業期間を経過後の右就労可能期間を通じ、平均して三五パーセント低下したものと推認するのが相当である。

そこで、前同様の方法により、右稼働能力低下による逸失利益の本件事故時の現価を算出すると次のとおり金一七一万二、五二三円となる。

62,500円×0.35×(89.0202-10.7334)=1,712,523円

(右八九・〇二〇二は月数一〇八、法定利率による単利年金現価係数、一〇・七三三四は前同)

3  慰謝料 金一八〇万円

本件事故の態様、負傷の部位、程度、後遺症の態様その他本件に顕れた諸事情に照し、本件受傷による原告才太郎の精神的苦痛を慰謝すべき額としては金一八〇万円が相当である。

(二)  原告操の損害 金六万〇、七三六円

〔証拠略〕を綜合すると、本件被害者はスバルライトバン(軽四輪貨物自動車)であり、原告操は一年間程度使用されたものを中古で買い求め、その後さらに約一年間使用したところで本件事故により損壊されたものであること、同原告は右被害車を修理することなく、これを下取りさせて新車を購入したが、右下取価額は金五万円であつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。しかしながら、〔証拠略〕によると、右の下取価額は右被害車の客観的価値そのものではなく、そのうちには新車の値引分も含まれていることが明白であつて、これを控除した被害車の価額は、諸般の事情に照し、金二万円と推認するのが相当である。

ところで、右被害者の車名等は必ずしも明らかでないが、〔証拠略〕により認められるその車長、車幅、原告操の供述に顕われるそのおおよその新車価格に照し、同被害車はその新車価格が金三七万五、〇〇〇円(東京店頭渡価格)のものであることが認められる(その当時、右価格のスバルライトバンが存したことは当裁判所に顕著な事実である。)。

そこで、会計学上および税法上採用されている固定資産の減価償却の計算方法のうち定率法により事故当時の被害車の価額を算定すると、次のとおり金八万〇、七三六円となる。

新車価格 金三七万五、〇〇〇円

耐用年数 三年(昭和四〇年大蔵省令第四〇号による。)

減価償却率 五三・六パーセント(右同)

使用年数 二年

以上により、375,000円×(1-0.536)2=80,736円

そこで、右金額から前認定の破損した本件被害車の価額金二万円を控除すると残額は金六万〇、七三六円となり、これが原告操の被害車破損による損害と認められる。

四  (損害の填補)

原告才太郎が本件事故による損害の填補として、自賠責保険金七五万円を受領したほか金二六万七、九九四円の治療費の支払を受けたことは同原告の自認するところなので、右合計金一〇一万七、九九四円を前記同原告の総損害額から控除すると残額は金三五七万一、二七七円となる。

五  (結論)

以上によると、

(イ)  原告才太郎の本訴請求は、被告笠谷、同宮原、同日出幸に対し各自金三五七万一、二七七円とこれに対する本件事故の翌日である昭和四五年一月二一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、右被告らに対するその余の請求ならびに被告秀太郎に対する請求は失当であり、

(ロ)  原告操の被告笠谷、同宮原に対する本訴請求は、同被告らに対し各自金六万〇、七三六円とこれに対する右同日から支払ずみまで右同割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと認められるが、その余は失当というべきである。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 尾方滋)

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